糖尿病と転倒
2018/02/26
寒い日が続いていますね。 まだインフルエンザなどの感染症に注意が必要な時期ですね。 皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて話は替わりますが,糖尿病の治療として運動療法が行われているのは,皆さんもよくご存知のとおりです。
今回は逆に,『糖尿病があること自体が,歩行などの運動にどう影響を与えるか?』 ということについて述べてみます。
ベルギー大学のローマンさんらは,施設に入所している60歳以上の高齢者で,糖尿病のある56人と,糖尿病のない45人を比べてみました。
(これらの方は,特に脳卒中やパーキンソン病などの神経の病気に罹っていない方々だけです。)
歩行測定マットを使用して,これらの方の【歩く速さ】や【歩幅】などを測りました。
すると,糖尿病があるというだけで,特に脳卒中などに罹っていなくとも,【歩く速度が遅く】,【歩幅も小さくなる】ことがわかりました。
また,糖尿病の方では,その【歩幅も一定せずバラバラ】の傾向がみられました。
次に,『考え事をしながら歩行する』という課題を与えました。 例えば『40から3を連続して引き算を行いながら歩いてもらう』と,正常の方でも歩く速さは遅くなり,歩幅も狭くなるのですが,【糖尿病があるとさらにこの課題の影響が大きくなる】ことがわかりました。
この他にも,糖尿病のある人が,糖尿病でない人と比べて,転倒しやすいという研究報告は多数あります。
出典:老年医学・高齢者医療の最先端
239巻5号 2011年10月29日 p.457-461
『糖尿病患者における転倒』 荒木厚,千葉優子
認知機能の低下は,非糖尿病者の1.5〜4倍高率に認められ,「糖尿病の第7の合併症」とも言われる。認知症が疑われる患者〔Mini-Mental State Examination(MMSE)23点以下〕の頻度は,外来通院中の高齢糖尿病患者で19%(認知症境界領域24〜25点を含めると36%),75歳以上の入院患者では25%に及ぶ(図)
出典:Medical Tribune 2009.4.16 メディカル・トリビューン社
なぜ,糖尿病があると転びやすくなるのでしょう?
これには,いろいろな理由があるのですが,主に,
1)糖尿病により,足や脚の知覚が鈍くなり,バランスを崩しやすくなる,
2)糖尿病になると,下肢の筋量・筋力・筋肉の質が低下する,
3)糖尿病があると,認知機能も低下して,周囲に注意が配りにくくなる,
の3つがあげられます。
注意が配りにくい状態の方に,『歩行以外のものに気をとられる』,『ふらついてバランスを崩す』などのいつもと違ったことが起きると,歩くことへの注意が薄れます。
そのために転倒される場合が非常に多いのです。
ケガや病気でリハビリテーションのため入院されている方にも,糖尿病がある方は,多くいらっしゃいます。
右記は,あくまで経験則ですが,糖尿病の罹患者は,やはり体幹のバランスが不安定のため,バランス訓練を多く取り入れた様に思われます。
糖尿病は,高血圧症とならんで,全身病とよく言われますが,血糖を丁度いい程度に調節してゆくことは,病気の再発や合併症の予防だけでなく,こういった歩行能力や運動能力を維持するためにも大切なことなのです。
リハビリテーション課より
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