床ずれに円座クッション?
2020/11/23
天動説から地動説へ定説が変わったようなスケールの大きい話でないにしても,科学の進歩により我々の常識は日々塗り替えられています。
そんな事例は,介護の中にもあって,『円座クッション神話』の崩壊もその一つです(私だけの感覚でしたらスミマセン…)。
今の常識は,円座クッションを床ずれ箇所に使用してはいけない。です。
※床ずれ⇒専門用語で『褥瘡(じょくそう)』と云います。
かつて,私が今の仕事に関わり始めた20年くらい前は,『褥瘡個所の除圧に円座クッションが向いている。』として使用されていました。
自宅でも病院でも施設でも見かけました。
(その他にも懐かしい褥瘡対応として,褥瘡部分にドライヤーをあててカラカラに乾かしたり,日光の下で甲羅干しなんかもしていましたね(笑))
(「医学の父」ヒポクラテスさんです)
その後,科学の進歩により褥瘡の原因や発生の仕組み,治癒の過程が解明され,その知識が広く周知されるにつれ,今では円座クッションは褥瘡を悪化させるので使用すべきではない。と正反対になっています。
いつ変わったかわかりませんが,私が2005年に読んだ専門書では既に円座クッションの使用を禁じていました。
しかし,現実はそうでもなく2010年,私が講師役となって行ったポジショニングの研修では,介護職の中にも円座クッション禁止を知らなかった方がいましたし,同じ年代に,ある患者様のご家族が『お医者さんから勧められて…』と,入院中のご家族の褥瘡治療用に円座クッションを購入なさっていた方もいました。
10年前でこの状況でしたので,今でもひょっとしたら知らない方は知らない,かも知れません。
そこで今回は,ただ『ダメ!』と言われても納得いかないと思うので円座クッションがいけない理由,円座クッションが褥瘡を悪化させるのはナゼか,まとめてみます。
はじめに,褥瘡がどのようにして発生するか,おさらいしておきましょう。
●褥瘡はどのようにして発生するか
さて,
寝ている状態で身体に圧迫がかかりやすい所と言えば,骨張っている所,筋肉がやせて骨が突出した所,です。
尾骨・仙骨・大転子・腸骨・かかとなどに褥瘡ができやすいのはこのためです。
褥瘡発生の直接原因は,圧迫する力が加わり続けていることなので,発想として
『患部を浮かせば圧迫がなくなる⇒褥瘡リスクが下がる』と,考えるのは正しいと言えます。
ところが,円座クッションには患部の浮かせ方に問題があります。
●円座は患部の突っ張りを増大させ,結果,患部を圧迫する
円座クッションを使用する時は,患部が尾骨・大転子・腸骨・かかとにあっても,同じように患部が円座クッション中央の窪みにはまるように当てられます。
この状態で円座クッションに体重がかけられると円の中の皮膚は,ちょうど太鼓の皮のようにパンパンに張られてしまいます。
ここに,患部の重みが乗っかると皮膚は引きちぎられんとばかりに益々強く張られてしまいます。
円の中では筋肉などの内部組織も強い力で張られます。
加えて内部組織は,骨と皮膚の間に挟まれて強く押しつぶされます。
そして患部周辺の血管は閉塞され,血流が遮断されます。
これは褥瘡が発生しやすい環境を作っているも同じです。
更には,
既に褥瘡があったり,皮膚が脆弱だったり,損傷していると皮膚は簡単に破れてしまうので大変危険です。
これらのことが解明され,円座クッション神話は崩壊。
『褥瘡患部に円座を使用してはいけない』,が常識となっています。
今のところは(笑)。
では,どんな対応が好ましいのか?
本ブログが長くなってきましたので,今回はここまでとします。
また,違う機会で紹介できたらと思います。
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