呼と吸
2017/09/17
呼と吸
例えばピアノの発表会や就職活動などでの面接、プレゼンテーション発表など、緊張して仕方がない時に何回か『大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた』、そのようなことは誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。 数年前には呼吸法を取り入れたダイエットが一時流行りましたね。
呼吸が心とつながっていることは体験的に多くの人が気付いています。 呼吸をすることは生きることそのものですが、それは呼吸が生命を維持すること以外にも、多くの作用を身体にもたらしているからでもあります。 ここでは、意識的に呼吸を変えてみることで身体や生活をも変えることができるというお話をしていきたいと思います。
呼吸は普段は無意識のうちに行っていることですが、しゃべったり歌ったり、息を止めたりなど、自分で意識的にコントロールすることもできます。それは、脳の働く場所によって呼吸が変化しているからです。まず、この点で呼吸を3つに分類してみましょう。
1.代謝性呼吸
脳幹部の呼吸中枢によって「無意識に」コントロールされている呼吸です。体内の酸素と二酸化炭素の量を適切に保ち、血液により運ばれた酸素は細胞のエネルギー代謝に使われます。
2.随意呼吸
大脳皮質が関わり「自分の意思で」コントロールすることができる呼吸です。これにより、呼吸の深さやリズムを変えたり、息を止めたりすることなどができます。言葉を発するのもこの呼吸の働きが関わっています。
3.情動呼吸
大脳辺縁系という場所が関わり、喜怒哀楽の感情や心の動きによって変化する呼吸です。興奮したり怒った時には呼吸が荒くなり、落ち込んだ時にはため息をついたりするのはよく見られることです。また、不安感やストレスが強くなると呼吸は浅くなり、速くて不安定になりがちになります。
このように、通常は人間の体の仕組みによって、無意識に行っている呼吸。 ですが自分で意識的にコントロールすることもできるのです。
さらに、身体の使い方によっても呼吸は2種類に分類できます。
- 腹式呼吸
お腹が十分にふくらむまで息を吸い込み、腹筋の力を入れてお腹をへこませて息を吐く呼吸です。これにより横隔膜の上下の運動範囲が大きくなるため、その分取り入れる空気の量も多くなります。
- 胸式呼吸
肋間筋という肋骨の間につく筋肉や首周りの筋肉を働かせて胸を広げることにより空気を取り入れる呼吸法です。運動時などに肩を上下に細かく動かして呼吸をしている時はこの呼吸の仕方になっています。
普段の自分がどちらの呼吸優位になっているかは、安静時に鏡の前で自分の呼吸の仕方を観察してみると分かります。お腹が良く動いていれば腹式呼吸、肩や胸の方が大きく動いていれば胸式呼吸が優位の呼吸になっています。
では、呼吸の仕方が身体にどのように影響するのでしょうか。それは、呼吸と自律神経の関係性を見てみると分かります。
内臓機能や免疫、血圧、ホルモン分泌など、人の身体活動の多くが自律神経という神経系により自然にコントロールされています。自律神経には緊張の神経である「交感神経」とリラックスの神経である「副交感神経」の2つがあり、これがバランスよく働いて身体が調節されているのが正常な状態です。しかし、現代人は多くのストレスにさらされており、この自律神経のバランスを崩して交感神経に偏った状態になっている場合が多い傾向にあります。すると、身体の回復やリラックスに働く副交感神経が働かずに身体の不調を引き起こしやすくなります。
呼吸中枢のある脳幹部は副交感神経に関わる脳神経の1つである迷走神経の存在する場所でもあり、両者は密接に関わっています。特に息を強く吐くことは迷走神経を刺激することになり、副交感神経を働かせることにつながります。つまり、腹筋を使って息を吐く腹式呼吸は副交感神経を優位に働かせる呼吸法になるのです。普段から腹式呼吸を意識して行うことにより、自律神経のバランスが整い、身体の活動は正常な状態に調節されていきます。
腹式呼吸には、その他にも多くの効果があります。
- 寝る前に数回繰り返すことにより、心身がリラックスし、眠りの質が良くなる。
- 横隔膜の上下に大きな動きが肝臓や胃腸などの内臓をポンプのように刺激することで内臓の働きが促進される。それにより、胃腸の消化機能や新陳代謝が活発になる。
- 身体の代謝機能に加え、腹筋の十分な働きによりダイエット効果がある。
- 横隔膜の上下の動きにより胸郭の圧力差が大きくなり、心臓に血液を戻す作用が促進されて身体の血液循環が改善する。このため、冷え性の改善に効果がある。
- お腹周りの筋肉を効果的に働かせることにより背筋が伸びて姿勢が良くなる。
このように多くの効果がある腹式呼吸ですが、いつでもどこでもできるのがこの呼吸法の魅力です。腹式呼吸の仕方は以下を参考にしてみて下さい。
- 息を吸う時は鼻から、お腹がふくらむまで十分に息を吸い込みます。
- 息を吐く時はお腹に力を入れて、お腹をへこませるようにして口から息を吐き切ります。息を吸う時の2倍くらいの時間をかけるつもりでゆっくりと息を吐くように意識すると効果的です。これに慣れてきたら鼻から吐くようにし、鼻呼吸を基本にしていきましょう。
普段は無意識に行っている呼吸ですが、最も簡単に行うことができる運動にもなるのです。1日に2万回以上も行うといわれる呼吸。少し意識してみるだけでも、長い目でみると身体にはとても大きな違いが表れるのではないでしょうか。ぜひ、健康な身体作りのための1つの方法として、呼吸法を生活の中に取り入れてみて下さい。
リハビリテーション課より
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